"A Christmas Gift Of Love" Review by トビオさん

  1. Winter Wonderland
    鈴の音が右に左に。ああ、バリーの歌声だ・・・! 
    そしてベルと、ギターが二本。シンプルでリラックスした演奏。
    声の伸びは若い頃のようには行かないかもしれませんが、
    むしろ暖かい表現の幅が遥かに広がったように思います。
    後半、2回も転調するのに、しっかり元に戻ってくるメロディ、これはホントに名曲。
    演奏によっては、ラストを半音上げて更に高揚感を増します。
    NHK「みんなのうた」では九重由美子さんが歌ってました。
    ♪雪の天使も僕らの肩に 幸せを持って来る 楽しいWinter Wonderland
    ところで、バリーの“new”は、やっぱり“ヌー”なんですね。
    歌詞は、こちら。http://washingtonmo.com/christmas/lyric/1050.htm

    1934年にガイロン・バート楽団、1946年にペリー・コモのレコードがヒット。
    1950年にはアンドリュース・シスターズが歌って更に大ヒット。
    作曲のFelix Bernardは、この曲を発表した1934年の翌年、
    後に世界中で愛唱される事を知らずに47歳で亡くなります。

    無邪気なほど暖かく優しい歌声。バリー、愛してるよ。
    (てへ。あ、城内の皆様、布団を投げないで下さい!)
  2. Happy Holiday/White Christmas
    一曲めと同じキーでいきなり歌い出す、この若々しさ!
    「踊る大紐育」のジーン・ケリーよりもカッコいい!
    MGMミュージカルの幕開け?! ディズニーランドのパレードの始まり?!
    シュルシュルのぼるストリングス。ビブラフォンがキラキラ踊り、
    トランペットが高鳴って、ホルンはめまぐるしく走り回る。(吹く人、大変よ。)
    ティンパニとベース、トロンボーンがぐっと下で支えるその向こうに、
    クリスマスの音楽には欠かせないチューブラーがキンコンカン・・・。

    そら来た!ちょっとタメて、二度目の♪Happy Holiday〜!が・・・うなりました!
    素晴らしい! 6.0、6.0、6.0、!!! やったぜ、ストイコ!
    更に嬉しいのは、その後トランペットとストリングスが舞い降りる中、
    ベースの音が幸せそうに誇らしそうに、深くブン、ブン、と鳴ることです。
    クリスマスは、これです!!!
    一転して軽く弾むリズム、そこに絡んで来るピアノのジャジーなしなやかさ。
    鈴とトロンボーンがお話してる! 隠し味のクラリネット、フルート。
    楽しい仲間の真中でにっこり歌うバリーの、“Holiday”の発音。
    僕はこれを、もう何度真似てみたことか。

    シンバルとチューブラーベルズが鳴り渡り、来ましたねえ、White Christmas !
    このストリングス、まろやかでたまりません、とろけます! Roseってしまいます!
    バリー、更に力を抜いて歌ってもいいのに・・・ま、いっか! クリスマスだぜ!
    またバックが盛り上がり、White Christmas のメロディを従えて
    バリーのHappy Holiday。そして、このフィニッシュ!
    楽器の数は驚く程の多さではないのに、うまく交通整理してあるので、十二分に
    ぶ厚く聞こえます。モダンで、奥行きがあって、幸せで、ガッチャンママが居て、
    ああ・・・・・ゴージャス!!! (錯乱、百花繚乱。)

    二曲とも、’42年「スイング・ホテル(Holiday Inn)」の為に
    アメリカのシューベルトと言われるIrving Berlinが作ったものですが、
    もう、ビング・クロスビーのことなんか忘れちゃいますね。
    ジャン、どごどごどん、ジャンッ!
  3. Santa Claus Is Coming To Town
    ちょっとディキシーふうの愉快なバンドがやって来たぜ! てな感じ。
    バンドの編成が大き過ぎず小さ過ぎず、ちょうどイイじゃありませんか!
    軽快で、貧乏くさくない。でも、それって難しいんだろうなー。
    アレンジもいいけど、特に右から聞こえるトランペットの二人、すげえ上手い!
    きっとこの人達、ハンサムとかいうわけじゃないけど、何故か女にモテる
    てなタイプですよ。腹立つなあ。セクシーだなあ。いいなあ。何の話じゃ。
    コーラスの女性ふたりは・・・こりゃcomさんにお任せ。 ♪why?!

    バリーは実にハツラツとしていて、高音なんか輝かしいほど。
    まさに、これを歌う為に生まれて来たのだとか。知らないけど。
    ラスト近くの、ちょっと何拍子か解からなくなりそうなアレンジの所、最高!
    ドラムが頑張って、鈴が飽きもせず(?)正確なリズムを刻み、エンディング。
    ああ、すっきり! ところで、サンタさんは本当に来てくれるの?
    (終わったと思わせといて、もう一度最後を繰り返しても良かったけどね。
    BARRY MANILOW U の “AVENUE C” みたいに。)

    詞の Haven Gillespie は、Ray Charles の That Lucky Old Sun など、
    しこたま作詞をなさった方だとか。
    曲の J. Fred Coots (John Frederick Coots) は、なんと
    Love Letters In The Sand (Pat Boone) の作者でもあります。
    歌詞は、こちらを参考になさってください。
    http://www.christmas-carols.net/carols/santa-claus-coming-town.html
    そこのあなたも、コーラスを。では、ご一緒に、 ♪why?!
  4. (There's No Place Like) Home For The Holidays
    この曲、知りませんでした。アメリカでは有名なのだそうですね。
    作詞の Al Stillman は、名曲 The Breez And I (そよ風と私)や、
    大脱走のマーチ(スティーヴ・マックウィーン主演の映画から)の作者。
    作曲の Robert Allen は、Johnny Mathis、Andy Williams、
    Garth Brooks など大勢のアーティストに曲を提供した人。
    歌詞は、こちら。http://www.purplelion.com/christmas/carol54.shtml

    前の曲の雰囲気を落ち着いて引き継ぎ、次第にスケールを増していく、この憎さ。
    ブラスが増えて、何気なく転調すると優しくストリングスが迎えてくれる。
    気が付けば、そこはもうハリウッドの映画のセットのよう。巨大なジョーゼットの
    カーテンがあがると、ハープが、ティンパニが、次々と現れる。そしてまた転調。
    クレーン・カメラがどこまでも進んで行く。ああ、もう俺をどうにでもしてくれ! 
    途中でリズムが軽くもたっとするのだけど、それが、えもいわれずチャーミング。
    ラストは逆に軽く走って、これがまた良い。これが人間の、音楽の魅力。
    二分半は短い! もっと連れて行って欲しい!
    でも、それは次の曲が更に素晴らしいからなのさ〜〜〜!(どういうこっちゃ)
  5. I'll Be Home For Christmas
    無伴奏のヴァース(verse、もったいぶった前置き、導入部)から入り、
    見守るストリングス、ピアノ、甘いハープ。意外にも、ハーモニカが切なく合うではないか!
    そしてバリーの低音とコントラバス(ベース)の低い響きの、何という相性の良さ!
    (♪ You can count on me の、me の声と、そっと呼応するその美しさ!)
    全体にハーモニカが上で引っ張り上げてくれているので、重くならない。
    え? バリーのロング・トーンが、たまにかすれる?
    いえいえ、その声は経験、年輪から来る思いの切なさ、あふれる慈愛なのでは?
    バリー、最後、よく力を抜いたね。これだけでも、もう涙、涙。

    ♪ dream の直前の、息つぎの音、最後にかかるかすかなビブラート、
    歌いきった後の、やるせないように息を吸う音。天使も祝福する一瞬。

    Written by Buck Ram, Walter Kent, Kim Gannon とありますが、
    Kim Gannon は、作曲家 Walter Kent とのコンビ作などで幾度も
    アカデミー歌曲賞にノミネートされた作詞家。
    Buck Ram は、Count Basie、Cab Calloway、Benny Goodman
    などの編曲を数多く担当した人。
    ということは、Buck Ram がアイデアを出して、それをあとの二人がまとめた?
    それとも、二人が作った曲を Ram が手直しした?
    いずれにせよ、同時進行で曲を作り上げることも多かった時代のこと。
    1943年に Bing Crosby が歌い、Sinatra はじめ多くのシンガーに愛されました。
    最近では BABYFACE も。

    戦場の兵士たちが故郷の家族を思って歌う、という設定で作られたようですが、
    とすれば、あのハーモニカは塹壕の中で兵士が吹いているという・・・・・?
    いや、戦場で悲しく吹くことなど、無くなってほしいです。
    歌詞は、こちらを参照してください。美しいページです。
    http://star2000.users.50megs.com/12/Christmas1.html
  6. My Favorite Things
    1959年、ミュージカル The Sound of Music の中の一曲として、
    ブロードウェイの舞台で Mary Martin が創唱。
    1965年の映画化の際は Julie Andrews が。
    映画が封切られた頃は興行収入が、王者「風と共に去りぬ」に迫る勢いでした。
    複雑な動きをする旋律である為、ジャズの世界でも多く取り上げられている曲。
    日本では現在、すっかりJR東海の京都へ行こうキャンペーンのイメージに。

    急に、速いテンポの6拍子。なんだかモダンジャズふう。
    バリー、ピッチ(音程)が正確じゃん、凄い!(今に始まったことじゃないけど)
    軽々と簡単そうに歌ってるけど、なかなかこうは行きまへん。
    あまたの“自称エンターテイナー”よ、聴くがよい!
    (Jitta さーん、ジャズの世界では、これくらい普通?)

    でも、若々しく少しばかり攻撃的に歌ってるけど、ずっとこのまま行っちゃうの?
    と思う間もなく、ハープが。ああ、やっぱり暖かくゴージャスな世界へいざなって
    くれるんだ。だから好きさ! いいドライブ感。次第に厚みを増していくブラス。

    わお、更に速い4拍子に。うねるピアノとハープ。迎えるトランペット。さあ大変だ!
    コンガとベース、ドラムのハイハットがアクセルを踏み込んでしまったではないか!
    どこまで行っちゃうか、もう知らないぞ〜と見上げるトロンボーン。

    転調! 舞い上がるホルン。いや、トロンボーンだ! なんと洗練された音。
    ハープが撒き散らすしぶきを、ストリングスが高く空へと広げ、
    勢ぞろいしたブラスとティンパニのヒットをかいくぐって、滑るようにサックスが。

    コーダ(ラスト)へ突入するよ、みんな、いいかい?! と両手を広げ始めたバリー。
    待って!俺も一緒に行く! うわあ、そこまで昇るか〜、俺をどうする気だ〜?!
    ところがお嬢さん、これが終わりじゃなかった! 引き上げるだけ引き上げといて
    突然世界がはじけ、そこはミュージカル回転木馬のような、絢爛豪華な6拍子!
    なんてことするの、バリー〜〜〜!  (ゼェゼェ・・・)

    作曲の Richard Rodgers は、作詞の Oscar Hammerstein U とのコンビで
    Oklahoma !、Carousel(回転木馬)、The King And I 、South Pasific など
    傑作ミュージカルの数々を世に送り出し、それ以前にも
    Lorenz Hart と組んで Blue Moon、The Lady Is A Tramp、My Fanny Valentine
    などの名曲を山ほど作ったという大変な人。ブロードウェイの神様。
    (今回のラストが回転木馬ふうなのは、Rodgers & Hammerstein へのオマージュ?)
    なお、 Hammerstein が二世を名乗るのは、祖父がブロードウェイのプロデューサー、
    父が劇場支配人であった為か。
    歌詞は、こちら。http://www.fortunecity.com/victorian/manet/620/favorite.htm
  7. The Christmas Waltz
    ん? バリーがちょっと歌い上げ過ぎてる? んー、確かに。
    「僕と君に」というより「僕と君達に」に聞こえてしまうのは、
    大きなステージでこそ映える、彼ならではの唱法ゆえ。
    もちろん、彼の歌い方はこればかりではないけれど、
    ある意味、バリーが敬愛する Judy Garland より Ethel Marman に似ているのでは?
    ぎゃはは、こんなこと書いたら怒られちゃうでしょうか。
    (Marman は、ミュージカルの大スター。なに歌っても人生の応援歌に聞こえちゃう
    人。
    代表作は「アニーよ銃を取れ」「ジプシー」など。ダイナミック唱法の権化。)

    おお、フルートよ、どうして今まで前面に出て来なかったのだ? 待ってたよ。
    粉雪のように美しくはかなげな音が、いったん少し不安そうに降りて・・・
    そして弦(ストリングス)の優しい風にふわりと抱かれて地上へ。
    凍てついた窓さえ幸せそうに見えるのは、部屋に暖かい火が燃えているから?
    愛する人が、家族がいるから?

    なんだか、クリスマス休暇に帰って来て「ただいま!」とドアを開けたら
    スカートのすそ幅1.5メートルの恋人が迎え入れてくれたような感じ。
    それが3メートルくらいに広がって、いつしか大きな映画スタジオで
    床掃除しまくるようにワルツを踊ってる。やがて気が付けば、元の暖かい居間。
    1950年代のアメリカ、もしくは“より良き頃”の夢?
    肝心なのは、“大きなテレビスタジオ”などではない事。

    その、生真面目なほど華麗さに忠実な演奏を、浮世離れと笑うかい、アトムや。
    どんなにエレクトリックな処理を駆使した音楽が流行る時代になろうとも、
    例えば映画は、アコースティックなオーケストラを用いるではないか。
    生の楽器の力を信ずるのは、バリーだけではないはずじゃ。
    ま、その響きをどう現代に反映させるかは、それぞれの考えがあるじゃろうが、
    バリーがここまでオーケストラにこだわるのは、とても意義のあることだとは思わん
    か?

    こうして窓の外を吹き過ぎる冷たい風に、我が身、我が身内の幸福を感謝するのも、
    決して偽善などではなかろうて。クリスマスなればこそじゃ。
    悲しい出来事の多い世の中であるからこそ、わし等はまず、幸福を知らなくては。
    そして、他人の幸福を思わなくては。
    きっとバリーは、そう歌ってくれているんじゃ・・・ないのかな。
    明日になれば又、お前は風の中。今夜は暖かく、ゆっくりするがいい。
    どうだね、エネルギー、も少し入れとくかい? (お茶の水博士)

    歌詞
    http://www.feyarteoffaeries.hispeed.com/krysplace/holiday/christmas/christmaswaltz.htm

    作詞家 Sammy Cahn は、Three Coins in a Fountain、All the Way、High Hopes、
    Call Me Irresponsible でオスカー受賞4回(ノミネート30回)。
    わしのお気に入りは Autumn in Roma と Love Me Or Leave Me 。
    一方、作曲家 Jule Styne の作品では、Gentlemen Prefer Blondes,Peter
    Pan,Gypsy,
    Funny Girl などのミュージカルが有名。その中の曲では、やはり People じゃな。
    二人のコンビ作には、It's been a long, long time、Time after time、
    The Things We Did Last Summer 、Three Coins in the Fontain(愛の泉)、
    Night Mood などが。Frank Sinatra とは切っても切れない関係。
    おだやかなクリスマスの夜を。
  8. I've Got My Love To Keep Me Warm
    1937年の映画 On The Avenue で、Dick Powell と Alice Faye が歌った。
    当時の邦題は「私をそっと暖めてくれるこの愛」。うはー。
    http://www.fortunecity.com/tinpan/newbonham/6/ivegotmylove2keepmewarm.htm

    いい乗り! バイタルなバンド演奏をバックに、バリーが力強くスイングしていくぞー!
    ドラムの張りが耳に心地良くて、イントロを何度も聴いちゃいます。
    いろんな楽器の音がはっきり聞こえるので、ビッグバンドというより
    バリーの歌唱に合わせたバンド編成という印象。ま、そりゃそうなんだけど。
    何というか、その・・・
    例えば目の前に花畑が有るとするでしょ? で、なんだかバラが巨大だったり、
    ひまわりがどこから生えているのか不思議な所に花開いているような感じ。
    それぞれの楽器との距離感をうまくつかめない僕は、お馬鹿なの? リンダ困っちゃう。
    なもんで曲全体がちょっぴり、達者な人を集めた運動会てな感じに聞こえちゃうの。
    (これはミキシングに対する好みのせいだと思います。
    それとも、いよいよ僕の耳がイカレテきた?)

    お馬鹿はこれくらいにして。
    「ぐお〜! ○○、俺は君が好きだ!って今すぐ言わなきゃ、俺はもだえちゃう!
    よしっ、行こう!」ってんで隣の下宿屋へすっとんで行って、二階の窓に向かって
    何度も小石を投げたんだけど○○ちゃんは出てこなくて風邪をひいたというのは
    僕です。
    若かったのですね。で、思うのですが、♪君への愛に僕は燃えている だから
    オーバーコートなんか要らない ってのは、ありゃ嘘ですね、実体験から言って。
    それを声高らかに歌っちゃうんだもんなあ、殿下は。雪の中、あられもなく。

    最初のあたり、バリーは何度も歌詞の頭に Oh, を入れているけど、
    これ、誰かの影響なのでは? 大勢の歌手が歌ってるようですが。
    作者は Irving Berlin 。
    Alexander's Ragtime Band 、Blue Skies 、Cheek To Cheek 、God Bless America 、
    How Deep Is The Ocean 、Remember 、Easter Parade 、Puttin' On The Ritz と、
    めくるめく名曲の数々を書いた人。もー、たまりません。
    僕は They Say It's Wonderful が、いいなあ。

    数年前のクリスマスに僕は決心し、帰省した二日後、彼女へ「もう終わりにしよう」
    と手紙を書いた。これで新しい生活が始まるんだという期待があった。一年後、彼女から
    クリスマスカードが届く。何年も一緒だったので、そんなものもらうのは初めてだった。
    「クリスマスなんて、なければいいのにと思う」と書いてあった。

    しばらくは平気だった。それから、彼女を思い出さない日はなくなった。
    もう一度会いたいとは思わない。きっと同じことの繰り返しになる。でも、彼女のことを考える。
  9. River
    穏やかなストリングスと、ウィンドベル。どこかの雪の風景だろうか。いや、違う。
    アメリカ中西部を思わせるようなギター。いや、北東部だ。ギターが泥臭くない。
    にしても、♪でも、ここは雪が降らないんだった というのは・・・カリフォルニアか。
    http://www.dykeworld.de/unterhaltung/songtexte/detailsongtexte.php?id=607

    カナダ出身の Joni Mitchell は、ニューヨークでソングライターとして注目され( Shadow and Light、
    Circle Game など)、ロサンゼルスで独自のフォーク・ロックの世界を展開した人。
    Woodstock、Big Yellow Taxi、Free Man In Paris、Raised on Robbery 、Help Me など。
    River が収録された1971年のアルバム Blue は、ボブ・ディランにも影響を及ぼした名盤。

    しかし、これまでのバリーに、こういう始まり方をする曲があっただろうか。
    実に格調高くシンプルで、ロック・テイストに満ちている。
    それでも、♪ I wish I had a river のバックに滑り込んで来る弦とオーボエ、
    これはまさしくバリーのもの。Could It Be Magic や If I Should Love Again など、
    ここぞという時に用いる黄金のテクニック。が、ここではそれを押し通さない。
    すぐに別のギターが、情緒に流されることを拒む川の水のように、さりげなく現れる。
    ♪ I could skate away on
    〔 僕に川があったらいいのに。そしたらその上をスケートして行けるのに 〕

    次に、しっかりとしているが決して冷たくないドラムとベース。
    落とした視線を再び前へ向けて歌うバリー。素晴らしい展開。
    ♪ But it don't snow here
    静かに高音を響かせるオーボエ。この高潔さ、気品。
    (皆さんごめんなさい! はつらつとしたバリーの声とバックの演奏に、
    若き日のニール・ダイアモンドを連想してしまいました。)

    そして問題はここ。
    予測の付かない独特なメロディを紡ぎ出す Joni の、あの高い音が来る・・・!
    まず、♪ I wish I had a river so long、I would teach my feet ・・・
    よくぞ抑えた。いや、よくぞ静かに盛り上げて行った。 ♪・・・to fly
    このスケールの大きさ! バックのコーラスも美しい! しかしもう一つ待っていた!
    ♪ I wish I had a river ・・・ 弦とベースだけで静かにおりて、次第に重なるギター。
    ♪ I could skate away on でエレクトリック・ギターが左に。右にも広がる。
    なんという毅然とした寂しさ。さあ、準備はできた!
    ♪ I made my baby cry
    おお、泣きたいほど好きだよ、Barry Manilow !!

    あとはもう、なにやっても、なにやーってもいいからな、バリー!
    二度目の♪・・・to fly の昇り方、これもいい!それまでがしっかりと
    現実を語っているので、バリー・バニラ・ドリーム・ワールドに陥っていない。
    エルトン・ジョンにも通じる雰囲気。まったく素晴らしい一曲。
    なぜ、これをシングル・カットせぬのだ?! 腹の底から、そう思う。
    (ことわっておきますが、バリーのドリーム・ワールド、僕大好き。
    バニラかどうかは解からないけど。)
    ラストの余韻。この、程の良さ!

    クラシカルなオーケストラとエレクトリックな楽器の融合、これが全く見事。
    歌の中の世界が容易に想像できてしまうのは、
    それが、現代アメリカ映画音楽の王道的手法でもある為。
    例えば「 The Cider House Rules (サイダー・ハウス・ルール)」
    (音楽 Rachel M. Portman )など、今回の楽器の使い方にそっくり。

    さて、Joni Mitchell の River は。
    ジングルベルをアレンジしたピアノのイントロから始まり、内省的に歌い進む。
    ♪ to fly は、まるで大きくため息をつくよう。それでいて、伸びやかで深い。
    ♪ I made my baby cry も、あまり歌い上げてはいない。
    別れた人に、僕はこの曲を聴かせたい。バリーの歌で。
    もう一度会いたいとは思わない。でも、今でも彼女のことを考える。
  10. What Are You Doing New Year's Eve
    再び雪のように降るバイオリン、ビオラ。おや、ミュート・トランペットが。
    ということは・・・うーん、都会の夜といった、ちょっと寂しくゴージャスな雰囲気。
    このサックスの、突き放したようなセクシーさ。そして
    ああ、鼻歌バリーのなんと艶っぽいこと! いいねえ、いいねえ。
    もう、細部をあげつらう事など忘れて何度も聴き入っております。
    途中、もっとバックの音を薄くしてもいいのに。終盤を引き立てるためにも。
    でも、なんでもいいの。いい気分だから。別れた恋人を想う歌に“いい気分”は変だけど。

    間奏の切なく悩ましい部分、もっと聴きたいなあ。でも、なんでもいいの。
    転調して無理なく盛り上げてくれるから。あはは、ハープまで高鳴る。
    やっぱりバリーだ。やっぱり嬉しい。バリー、ずっと歌い続けてくれよな。
    ラスト近く、穏やかな表情の陰に隠されていた悲しい思いが、ふっと現れる。
    いや、寂しいのは寂しいけれど、それよりも君は・・・元気でいるのかい?

    1947年に作られ、48年 The Orioles 、50年 Nat King Core が歌ってヒット。
    作者の Frank Loesser は、Guys And Dolls、How To Succeed In Business Without Really Trying、
    Where’s Charley? などのミュージカルを作り、
    Baby, It's Cold Outside (’49の映画 Neptune's Daughter から)でオスカーを受賞。
    そして、何といっても我等バリー・ファンの胸には、
    I Don’t Want to Walk Without You (’42のミュージカル Sweater Girl より)
    を Jule Styne と共作した人として記憶される。

    http://lyricsplayground.com/alpha/songs/xmas/whatareyoudoingnewyearseve.html
    ヴァース(前置き)を入れて歌うのは割と珍しいことのようだけど、
    その歌詞は、どこを探しても見つかりませんでした。


    さて、いよいよ(やっと?)最後の曲ですが、ここまでの曲の作者を調べて興味深かったのは、
    半数以上がニューヨーク出身だという事。しかもそのまた半分が、バリーと同じブルックリン生まれ。
    そして、クリスマス・ソングの定番を集めると、どうしても作家のほとんどが故人ということになってしまいます・・・
    が! 次の人たちは、ピンピンしてます!
    Written by Bruce Sussman and Barry Manilow 。
  11. A Gift Of Love
    名残惜しそうに暖かい音を奏でる楽器たち。ありがとう、ありがとう。
    お、しっかりドラムが入って来たぞ! ノスタルジックな編成で終わるのではないのだな?
    オーボエとギターとエレクトリック・ピアノが一緒に微笑むこの気持ち良さ。
    やはり来たか、転調。もうひとつ。またひとつ。ハープが硬めにキラキラ。泣かせるなよ!頼むぜ。
    おお、バリー、まだ行かないでくれ。
    俺が悪いこと言っちゃったよな、歌い上げ過ぎだなんて。
    もっと歌い上げちゃっていいからさ! 派手に両手をばーんと広げちゃっていいからさ、頼むぜ!
    でも・・・もし、これを2コーラス半に伸ばして盛り上げたら、
    「うー、腹いっぱい食ったぜ!」になってしまうかな。
    バリー、ありがとう。すげえ“贈り物”だったよ。一生大事にするからな!
    (最後の♪ Love の後のリップ・ノイズ、カットしないでくれて、嬉しかった。
    ああ、バリーは今、この時も、僕らと共に生きてるんだなあって気がする。)


    これだけ新曲なので、歌詞は無いっす。
    かわりに、このアルバムの紹介記事を。
    http://www.cbsnews.com/stories/2002/12/23/earlyshow/leisure/music/main534107.shtml

    ここで、歌詞の紹介を忘れていたものをふたつ。

    Happy Holiday
    http://www.geocities.com/vpnut/HolidayInn.html
    なんと、映画のサウンドトラック盤が流れます。
    歌っているのは Bing Crosby と Marjorie Reynolds 。

    White Christmas
    http://www.kcmetro.cc.mo.us/pennvalley/biology/lewis/crosby/wxmas.html